始発駅

「イチコの選択」では大変お世話になりました。無事連載を終えた今、このブログで何ができるのかを考えています。のんびりお付き合い頂ければ幸いです。

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醜態(9)

 仲間に加わってくれる者との顔あわせはこの日だけでは終らなかった。イチコが佳奈ちゃんという女性に不二子さんから引き合わされたのは、浅見や石橋と会った翌日の夜遅くだった。待ち合わせ場所は郊外ではなく、今度は都心のファミレスだった。
 佳奈ちゃんという女性はイチコたちのように忙しく働いているわけではない。なのになぜ最初の顔合わせに参加しなかったのか、その理由はイチコが訊くまでもなくあらかじめ不二子さんから説明があった。
 原因は浅見にあると彼女は言う。
 「あの子がいたら、佳奈ちゃんが食って掛かるかもしれないから。そうなったら困るでしょ? だからあの子がいるところには連れて行けないのよ」
 以下不二子さんの話である。
 七年当時浅見はある組幹部の者に心酔して、「兄貴、兄貴」とまるで金魚のフンのように付き従っていた事がある。この兄貴のために浅見は多額の借金を重ね、それでも足りないというので、
 「わたしの友達に金持ってる人がいるから、会っていい話にしてもらったらって言ったの」
 その友達というのが佳奈ちゃんのことである。
 佳奈ちゃんは親から相続した何千万もの遺産をある金貸しに預け、金利で儲けていた。七年にイチコがしたと同じ金主の立場である。
 この情報を浅見から聞いた兄貴が、いつのまにか金もろともその金貸しと姿を消してしまった。その金貸しは女性だったというのだから、うまくねんごろの仲にでもなったものであろうが、やられた佳奈ちゃんはたまったものではない。しかし当のやった本人はいないのだから、浅見に当たるしかないことになった。それが事の顛末である。
 「松木の借金がやっと終ったかなと思ったら、あの子が来たのよ。あの子が悪いのよねえ。あの子、お金が好きだから」
 と不二子さんは言う。
 話を聞いていたイチコはむかついた。この場合悪いのはおまえだ、と言いたいのをこらえる。そんな紹介をするくらいならその口で友達と呼ぶな、と思っている。不二子さんが佳奈ちゃんを訴訟に巻き込むのは借りがあるからだと理解しているイチコは、
 「あなたはどうなの?」
 と訊いてみた。
 「え? わたし? どういうこと? わたしはお金がなくっても人にはしてあげてきたわよ。わたし、優しいから。人を泣かしたりなんかしないの」
 バカ、と思ったイチコは、
 「佳奈ちゃんから借りてるんじゃないの?」
 「ああ、三十万くらいよ。少しずつ払ってるけど。佳奈ちゃんが困って電話してきたら何か食べるもの持って行ったりしてる」
 彼女の借金の方が時間的に早いはずである。自分が借金をしておいて金欠の浅見を行かせるなど、実は二人で吊るんでいるのではないかと思われても仕方のない話である。佳奈ちゃんの面倒を見るのは当たり前だ。自慢げに言うほどの事ではない。イチコの考えでは、そうなる。
 佳奈ちゃんという女性は一見したところ、ごく一般の家庭の奥さんという印象だった。不二子さんより少し年上の感じである。
 ファミレスでイチコと対面すると、
 「お世話になります」
 と佳奈ちゃんは軽く頭を下げた。
 イチコは取れるかどうかも分からない松木の訴訟のことを言っているのだと思った。


 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
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コメント


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「管理人のみ」の方へ

 ブログの新生おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
 この方法でよかったでしょうか。頭が悪いので連絡手段が見つかりません。
 ご希望があればどのページでも構いませんので、文句を言って下さい(笑)
 ご訪問、そして早々と連絡して下さったことに感謝しております。ありがとうございました。

紗羅の木 | URL | 2007年08月30日(Thu)13:39 [EDIT]

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| | 2007年08月30日(Thu)10:46 [EDIT]

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