始発駅

「イチコの選択」では大変お世話になりました。無事連載を終えた今、このブログで何ができるのかを考えています。のんびりお付き合い頂ければ幸いです。

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ミスキャスト(3)

 一月が過ぎて二月になっても不二子さんからは何の連絡もなかった。彼女からイチコの携帯に着信が入ったのは驚くほど遅く五月になってからだった。
 一方判決も出て落ち着いているかに思えた宮下は、遅れを取り返すかのようにイチコに対して奇襲攻撃を再開していた。
 いきなり怒鳴る宮下のやり口はいつも変わらなかった。不二子さんの誹謗中傷と付き合いの有無を確認する内容も変わることはなかった。
 その宮下がひとつだけ、なぜ今頃になってとイチコが不審に思うような話をした。
 「あのキャバクラの、あれもあのババアや」
 と宮下は言ったのである。実際には何年度の事件なのか、イチコには分からない。が、しまい込んでいた記憶はすぐに呼び戻すことが出来た。
 「ああ、新聞に出てたやつ」
 イチコはなぜかとっさにとぼけた。新聞には出てはいないはずである。
 「お? おお。ババアが七百やったか八百やったか、ぱくっと行って飛んだんやねえか。せやからあんなことになったんや」
 驚愕の内容だった。さらに、
 「いまだにあれのことを知らんか言うて聞いて来るもんがおるんや。三百ほど貸しとんですけど取れまへんか言うて。坊主なんかもそうや」
 「坊主?」
 「おお、坊さんみたいな男がおるんや。それなんかもあれにやられた口や」
 宮下の口からはシャブの話は出なかったが、あえてイチコも聞かなかった。
 この話がもしも真実ならば、あの当時いち早く情報を持って来た彼女の行動にこそ意義があったことになる。誰でもそうだが、自分に関連することで悪い情報ほど、半信半疑ながら最初に耳に入れてくれた者を信用してしまう。その点を思えば、彼女のやり方を見てきたイチコにはまんざらでもない話だった。
 ただし内容が内容なだけにこの話を彼女に確認することはイチコにはできなかった。が、イチコが彼女に疑いの目を向けるには十分過ぎる内容の話だった。憎悪が増したことも確かである。
 以後イチコは不二子さんと公正証書を巡ってもめるのだが、奇しくも時期を同じくして宮下はイチコに怒鳴り込むことを繰り返す。そのためイチコは追いすがって来る彼女の醜さを憎み、少しでも早く振り払うことに躍起になった。証書の作成にも異様な執着を見せて行く。
 
 

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