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始発駅

「イチコの選択」では大変お世話になりました。無事連載を終えた今、このブログで何ができるのかを考えています。のんびりお付き合い頂ければ幸いです。

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バブルと新法(11)

イチコはうまくことばにはならない不安を感じていた。それは新法施行によるものだけでなく、自分の父親に帰属するものでもあったのかもしれない。
 イチコの母親は、行方不明者から復帰して戻って来た父親を定年までまっすぐ会社に行かせるためだけに働くことをやめ、自分の欲しいものは野菜や果物を売って買っていた。そんなことをしても儲けは微々たるものである。働きに出る方がいいに決まっていた。
 それでも先の事を考えたら、これから先、あの男にフラフラされたら、もう後がない、と母親はよく言っていた。
 そんな男ならさっさと別れたらよかろうと思ったものだが、母は先祖代々の家を捨てられなかったのだろう、とイチコは思う。
 イチコの父親は養子ではなく、母親を嫁にもらった立場である。ただしそれは戸籍上だけで、家屋敷は母方のものだった。悪く言えば、父方に家屋敷を乗っ取られた格好だった。
 母親は逃げる場所もなかったということである。
 親父はずるい、とイチコは思う。
 母親が受けた屈辱を、もしかしたら自分も受けるかもしれない、という思いがイチコの心の隅にあった。
 そのため、宮下といっしょになってから初めて自分のために大きな出費をすることになった自動車学校の費用も、イチコはそのころ通っていた生保会社の研修費でまかなった。車の購入代金は独身時代から持っていたもので支払っている。
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