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始発駅

「イチコの選択」では大変お世話になりました。無事連載を終えた今、このブログで何ができるのかを考えています。のんびりお付き合い頂ければ幸いです。

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平成六年某月(2)

 不二子さんはイチコより十歳年上であり、宮下とのつきあいもイチコより長かった。ふだん宮下が世話になっていることも、ことばにこそ出さなかったが、イチコは十分感じていた。仕事のことは何も言わない宮下だったが、それはいっしょに暮らしていたなら誰もが持ち得る、女の直感だった。

 温泉旅行をうまくかわせたと思ったのは、ほんのわずかな期間だった。数日後、また不二子さんから電話があった。
 「あんた、宮ちゃんからオーケーもらったわよ。わたし、あんたとこのヨメがいいって言ったの。そしたら、行って来たらええやないかって。だから行けるわよ」
 彼女は強引だった。
 イチコは仕方なく承知した。乗り気にはなれなかったが、今度はもう断れなかった。
 温泉旅行は滞りなく終わったが、その宿泊中の不二子さんの言動は、わずかながらイチコの脳裡にひっかかりを残した。
 それはチェックアウトの時だった。
 「これ預けとくから。あとは帰ってから精算して電話ちょうだい。足らずは払うから」
 そう言うと不二子さんはイチコにいくらかお金を預けた。
 些細なことではある。
 もともと奢ってくれる約束でもなければ、それを期待していたイチコでもなかった。しかし、イチコがかつて知っていた不二子さんは、もっと金離れがよかった。
 少々不審だったが、イチコは承諾した。





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