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始発駅

「イチコの選択」では大変お世話になりました。無事連載を終えた今、このブログで何ができるのかを考えています。のんびりお付き合い頂ければ幸いです。

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台風の目(4)

 不二子さんが提示した二十万という小口額は、高利貸しには妥当といえば妥当だったが、そんな小口の金利を折半したところで、何口も貸付けなければたいした金額になりはしない。
 一ヶ月のトータルでいくらの儲けがあればよいのか。事と次第によって断るしかない。
 今夜あたり宮下がひょっこり帰って来てくれたらよいのだが。
 そんな事を考えながら、イチコは半ば腹をくくっている自分を認識していた。不二子さんがくわしい事情を説明してくれる気配もなかったが、宮下が帰って来る事など期待できないのは、イチコ自身分かっていたのである。

 金主から借りた金を返済する責任を負うのは、じかの借主、この場合は不二子さんである。万が一債務者からの回収が不能になった場合も、その責任の所在は変わらない。
 返済においては現金をもって磨くのが原則である。
 何が起ころうと元金だけは返してもらわなければ、イチコも困るのである。
 トイチを自分から言い出した点と、宮下のような輩とも付き合いがあるという点から、不二子さんはこれくらいのことは分かっているものとイチコは踏んだ。

 イチコは出資金額がある程度の額に達したならば、そこで停止するつもりで、宮下不在のこの夜、トイチを承諾した。
 礼を尽くすという事なら表も裏もなかった。
 これがもしかしたら疫病神になるか、目の前にいる強引に居座ってしまった不二子さんを先刻からずっと見ていたイチコは、一瞬、そんな予感に捕らわれた。
 その予感を、まさか、と胸の奥底に押し込む。
 これは不二子さんのママとしてのプライドであり、貫禄なのだとイチコは思った。
 
 不二子さんが宮下に金融の客を紹介してくれていた事は、彼女から告げられるまでもなく、イチコはうすうす知っていた。それが最初からである事も、イチコは知っていたのである。

 金融を始めた頃、
 「宮ちゃんやったら、なんぼでも借りたげるよ。早う大きゅうなりいや。みんなそう言うてくれるんや」
 宮下がイチコに聞かせたことばだった。宮下特有のホラである。
 ああ、ママだな、とイチコは、そのことばの背景に不二子さんを感じたのだった。
 
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コメント


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 ふむ。イチコは結局貸すことを決めたのですか……。
 さて、これが吉と転ぶか、凶と転ぶか。
 イチコの判断は果たして正しかったのでしょうかね?w
 真相は恐らくもっと先になるのかなー。

神瀬一晃 | URL | 2007年08月08日(Wed)11:53 [EDIT]

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