始発駅

「イチコの選択」では大変お世話になりました。無事連載を終えた今、このブログで何ができるのかを考えています。のんびりお付き合い頂ければ幸いです。

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記憶の引き出し(3)

 刑事は宮下の予告どおりにやって来た。
 朝早くからやって来た三人の家宅捜査の刑事たちは、イチコの家族に気を使いながら玄関で捜査令状をかざして見せた。幸い息子たちは学校に行っていた。
 家宅捜査はこれが初めてではないイチコは、何事なのか、という表情で応対した。そのくせ刑事たちを部屋に通し終えると、座卓に陣取り作業が終るのをのんびり待っていた。
 いくら探しても宮下は住んでいないのだから、たいしたものは出て来ない。それを知っているイチコは落ち着いたものだった。作業が続けられている合間に一番頭の刑事からイチコは宮下の容疑の説明を受けた。
 「お父ちゃんはな」
 と刑事が言う。
 「許可も取らんと金貸しをしとったんや」
 これを聞いたイチコは、いつの間にもぐりになったのか、と少し驚いた。確か三年に一度は免許の更新をしなければならないはずだが、他人名義のせいでうっかり忘れていたのか、と思った。発見された金庫に残されていたのは、おそらく借用証書の類だろう、と想像する。それにしても、山奥の方なのに誰が通報したのだろう、と思ったりもした。空き巣にやられた宮下が被害届を出したのだろうか、それなら滑稽な話だ、などとイチコは考えていた。
 宮下の金庫が盗難に遭ったことや、知りもしない山奥の方からそれが発見されたことなどは刑事は毛ほども触れなかった。イチコも別れたことになっているのだから、いらぬ事は聞かなかった。

 刑事の尋問はあまり突っ込んだものではなかった。宮下とは本当に別れたのかという事の確認と生活費の出所についてだけだった。いわば予定通りのものであった。
 宮下は当然先に拘留されているはずである。借用証書が出ているのだとしたら、今頃はのらりくらりと刑事を手こずらせていることだろう。この拘留は長引きそうだ、とイチコは思った。
 
 イチコの予定では何も押収されるものはないはずだったが、金庫の奥から出てきた宮下の印鑑を一本だけ押収されて家宅捜査は終了した。 
 
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コメント


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神瀬一晃さまへ

 ご期待に添えなかったようですが、丁々発止は別宅の家宅捜査では余程のことがない限りありえないです。ドラマのシーンの設定ではよく見かけますが、あれは現実のことなど二の次にしてますね。もっとも何も知らない者が書いている可能性もありますが。
 男の事務所にはオラオラで行くのだと思いますが、別宅の場合マル暴のいかつい刑事さんたちはたいそう気を使って来られます。何も出てこない限り怒鳴ったりもしません。捜査官の腕章でさえ、人目に付くところでははずして通られるくらい別宅の家庭には気を使ってくれます。のちにその場面が出てまいりますが。(たぶん)
 作者もどこにそういう場面を挿入すべきか迷ったようです。このシーンは少々説明不足だったのかも、ですね?(イチコ談)
 

紗羅の木 | URL | 2007年08月16日(Thu)21:42 [EDIT]

 なんか、刑事さんとのシーンがあっさりしてたなぁ。
 もうちょっと緊迫した雰囲気になるものかと思ったのですが……イチコが冷静過ぎたのでしょうかね。場慣れしているとも言えますけど。
 この先はどうなるのか。見当がつかないので、また読みにきますぅ。

神瀬一晃 | URL | 2007年08月16日(Thu)16:38 [EDIT]

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