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始発駅

「イチコの選択」では大変お世話になりました。無事連載を終えた今、このブログで何ができるのかを考えています。のんびりお付き合い頂ければ幸いです。

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記憶の引き出し(6)

 不二子さんの話をイチコは丸々信用したわけではなかったが、借用証書と保証人の件についてだけは、嘘ではないだろうと思った。宮下がまったく口に出さなかった事は、イチコから言わせれば真実である可能性が高いのである。
 言いたくない事は、それに関連すると思ったら些細な事でも鼻から言わない。宮下にはそういうところがあった。突っ込んで聞けばたいていの事は話してくれるのだが、そのタイミングを間違えると、話してくれるどころか、逆にボロクソにののしり倒されて終るのだ。そうなるともう二度と話してくれない。
 ホラは吹くが、大事な話でイチコに嘘を突くような男ではなかった。言いたくない事はひたすら言わないのである。不二子さんの世話になっている事を知られたくないのだろう、とイチコは宮下の気持ちを推し測った。

 その強情極まりない宮下の話と彼女の話を照合してみると、他の客がうたったという可能性も捨てられないが、彼女が調書を取られたというのでなければ話は合わなかった。
 この二人の話はなぜか、いつも合わない、とイチコは思っている。
 宮下に突っ込もうにも、宮下の方は、金庫から抜かれた現金が戻って来るわけでもないのだから、これまでにないほど機嫌が悪かった。裁判を控えてまた金が忙しくなったのである。このまま行くと、わずかしかない絶好のタイミングは逃して終るだろう、と思ったイチコはこの事件を記憶の底に仕舞い込んでしまった。
 起こってしまったことは、元には戻らない。いつものことであった。それよりも、今出来る最善のことをするしかない、とイチコは思う。

 イチコがしなければならない最善の事はいうまでもなく、不二子さんが持ち出した八百五十の回収だった。今回の事件について厳しく突っ込んで非を正すより、機嫌よく逃げずにいてもらわなければならなかった。イチコが彼女に追及するのをあきらめたのは、この理由による。

 正直なところ不二子さんから警察で調書を取られたことを聞かされたとしても、イチコは怒る気はなかった。大量の借用証書が出ていることを聞いたからには、仕方ないで済ませるつもりでいた。公平に見るならば古い借用証書まで保管しておくようなドジな宮下が悪いのである。

 


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コメント


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神瀬一晃さまへ

 いやいや、イチコはぼんくらですよ。
 どちらかという受け入れる方が得意なようです。おかげでよく揉め事が舞い込んで来ます(笑) 今の裏社会には合わない不出来な人間ですね。(イチコ談)

紗羅の木 | URL | 2007年08月22日(Wed)04:18 [EDIT]

 なんだか、イチコが凄い大人に見える。
 達観しているのか……それとも全てを受け入れて、諦めているのか。でも、そのどちらでもないような気もしますw
 トイチのお金の回収は果たしてできるのでしょうか……。

神瀬一晃 | URL | 2007年08月21日(Tue)18:38 [EDIT]

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| | 2007年07月21日(Sat)13:15 [EDIT]

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| | 2007年07月21日(Sat)08:40 [EDIT]

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